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感動を詰め込みすぎた『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

※ネタバレと辛口あります。

2020年に公開した『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、今年ドイツで開かれるイベントへの参加が発表されるなど根強い人気のあるシリーズの映画です。

 

製作は、京都アニメーションでテレビ版が初出。外伝も作られたシリーズ3作目に当たる本作は、テレビ版や外伝のその後を描いた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完結編です。

 

今までは誰かの出来事に関わるかたちで物語が進んでいましたが、本作ではヴァイオレット自身のことが物語の主軸に「あいしてる」が重要なワードになりました。

 

  • 神回と評判のテレビ版10話と繋がりのある導入
  • 時間の流れを感じされる描写
  • 一部のキャラクターに疑問も

 

このような内容で感動的な結末ではあるものの、そのストーリーは2時間20分の長い映画としては疑問に思う部分もある内容でした。

 

10話と繋がりのある導入

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本作の導入はテレビ版10話で登場したアンの孫、デイジーの視点から始まります。

 

アンの死後、かつてヴァイオレットが代筆した手紙を見つけ、それをきっかけにデイジーが自動手記人形(ドール)というかつて存在した代筆業とヴァイオレットについて辿る導入でした。

 

デイジーの時代では自動書記人形はすでに廃れ、ヴァイオレットたちが働いていたC.H郵便社は資料館になっています。

 

時間の流れを感じされる描写

物語の視点はデイジーからヴァイオレットに移るのですが、劇場版はテレビ版や外伝から時系列が進んでいて、その象徴として完成した電波塔が挙げられます。

 

電波塔の完成により電話が普及し、C.H郵便社にも電話が設置されるようになりました。

 

ヴァイオレットは予約が3ヵ月先まで埋まるほど人気ではありますが、同僚のカトレアは会議の書記の仕事をするようになり、アイリスはパーティーに参加してコネ作りをするなど自動手記人形という仕事への陰りが過去作以上に出てきます。

 

外伝まではC.H郵便社にいたエリカも退職し、劇作家として本格的に活動を始めたことが序盤で触れられましたがエリカの出番は序盤のみでした。

 

また本作ではユリスというキャラクターが新たに登場します。ユリスは少年で親友のリュカや家族に手紙を残したいと考えており、ヴァイオレットに代筆を依頼しました。

 

ユリスは病気で入院しており、自分が死んだ後に手紙を送りたいと考えたからです。

 

このユリスの願いは状態の悪化やヴァイオレット不在のタイミングが重なったため、リュカへの手紙だけは叶えられず、代筆できるほどの話もできなかったため電話で直接リュカとやり取りしました。

 

電波塔の完成に並ぶ時代の流れを感じさせるエピソートです。

 

ギルベルトとの再会

ヴァイオレットは代筆業を営んでいますが、少年兵として戦争に参加していた過去があり、当時の恩人であるギルベルトの「愛してる」という言葉の意味を知ることが代筆業を始めたきっかけ。

 

ギルベルトの士官学校時代からの友人で、戦後C.H郵便社の社長になったクラウディアの下で代筆業を始めます。

 

ギルベルトは未帰還兵でしたが本作で生存が確認され、ヴァイオレットは会いに行くのですが拒絶されます。その姿はかつてのギルベルトとはかけ離れたものでした。

 

ギルベルトはヴァイオレットに名前を与え教育を施し、人として生きていけるように育てたものの再開時はそのことに後悔する姿を見せるだけです。

 

気にかけていたヴァイオレットがどこで何をしているのかも知ろうとせず、兄のディートフリートから母親が死んだことを告げられても大して気にしません。

 

戦争に参加したことへの罪悪感からそのような性格になったことが示唆されていますが、ヴァイオレットをひたすら拒絶する姿には違和感がありました。

 

そんなギルベルトもヴァイオレットが書いた手紙に突き動かされるように、ヴァイオレットを追いかけ、最後に2人は再開します。

 

このエンディングは綺麗なものでしたが、ギルベルトがヴァイオレットに言った「あいしてる」が恋愛感情なのか家族愛なのかはぼかしたままでした。

 

それまでの描写を見る限りでは家族愛と思われるのですが、

  • カトレアがヴァイオレットとディートフリートをお似合いだと言う
  • クラウディアに自分に子供ができたら「女の子がいい」や「男の子がいい」というセリフがある

このように本作には恋愛やその後を匂わせる描写が出てきますし、ヴァイオレットとギルベルトは最後、ベッドの上で指切りをします。

 

この指切りはヴァイオレットがユリスから教わったものですが、テーブル越しに向かい合うならともかく、同じベッドに座りながら指切りをするので2人の関係をどう捉えればいいのか迷うものとなっていました。

 

同時進行のエピソード

本作は大きく3つに分けられます。

  • デイジーが自動手記人形とヴァイオレットの痕跡をたどる
  • ユリスの依頼
  • ヴァイオレットとギルベルトの再会

このうちデイジーのエピソードですが、導入以降出番はなく中盤に少し登場するもののあまり話に関わりません。

 

資料館になったC.H郵便社を訪れ、最後にヴァイオレットとギルベルトが再会した小島に到着するのでまったく出番がないわけではないのですが、ヴァイオレットの痕跡を辿る話としては中途半端なものになっています。

 

ユリスも『寿命が残り少ないと感じているキャラクターが家族への手紙の代筆を依頼する』というエピソードは、デイジーが10話で出てきたアンの孫なのもあって10話の焼き直し感がありました。

 

ギルベルトとの再会も上記の通りで、かたくなにヴァイオレットと会おうとしないギルベルトの描写も含め、ヴァイオレットとの関係をどう捉えればいいのか迷う内容です。

 

2時間以上かけてこれらのエピソードが描かれるのですが、ユリスの最後もヴァイオレットがギルベルトに拒絶されている最中だったり、デイジーの出番がほとんどなかったりと散漫な部分のある映画でした。

 

 

3つのアルバム

本作はオーケストラコンサートを開くほど音楽面に力を入れたコンテンツです。

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主題歌のシングルの他にアルバムを3枚発売しており、その1つのサントラは『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』の2つにテレビ版のエピソードをモチーフにした楽曲を加えたCD3枚組です。

 

 

劇中のエピソードをモチーフにした楽曲をヴァイオレット役の石川由依さんが歌うアルバムで、全13曲のうちテレビ版が10曲、外伝が2曲と劇場版が1曲という構成でPVもあります。

 

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これらの他にピアノアレンジアルバムも発売しています。

 

 

劇中の音楽をピアノアレンジした楽曲をまとめたCDだと2枚組のアルバムであり、セイコーとのコラボで腕時計の販売が発表が最近ありました。