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SF的な面白さは極力排除【アニメ『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』3~4話より】

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※辛口です

前後編として綺麗にまとまった3話と4話ですが、AIの描写に絞ると気になる点が出てきます。

第3話『A Tender Moon Tempo』

  • 2話から15年後、マツモトがヴィヴィの前に再び姿を現す。
  • 宇宙ホテル・サンライズが地球に落下する未来を聞かされ、ヴィヴィは渋々協力する。
  • ヴィヴィはサンライズで出会ったAI・エステラと心についてやり取りをした。
何もしないマツモト

エステラはサンライズのオーナーを務めるAIで、サンライズが地球に落下した原因とマツモトは言います。

マツモトはエステラを破壊しようとするのですが、そのためヴィヴィに協力を求める必要が感じられないまま話は進みました。

というのもマツモトはヴィヴィに対し、エステラを初期化した後でボディの処理を頼んでいます。

ですがマツモトは2話の描写から分かるように、ビルのセキュリティからテロリストの爆弾までコントロール可能で、作業用の重機のような機械を体として使いヴィヴィを力づくで止めてもいます。

ヴィヴィに頼らなくてもエステラもサンライズを止められそうなものですが、その辺りの言及はありません。

加えてエステラに抱きかかえられた際、2話でヴィヴィに無許可で戦闘プログラムを流し込もうとしたように、有線でエステラを初期化することもできそうなものですが、3話の間は何もしません。

SF要素の排除

3話が始まった時点で、AI命名法から更に踏み込んだAI人権法が成立していることがヴィヴィの口から語られます。

ではこのAI人権法によってヴィヴィの生活に何か変化があるのかというと、そういったものはありません。理由も分からないままステージの観客が増えたくらいです。

アンドロイド人権法といった体を持ったAIに限定していないので、ニーアランドのナビにも人権が与えられたことになりますが、ナビもそのことについて描写はありませんでした。

宇宙ホテルで働くAI・ルクレールが立ち上がる際、人間のように体を伸ばしたこともそうですが、このアニメは『この世界におけるAIはこういう存在である』という描写がとても曖昧です。

第4話『Ensemble for Polaris

AIの死の基準

4話が始まるとルクレールの体から、首から上が離れた姿が画面に映ります。エステラの振りをしたエリザベスがやったのですが、そもそもルクレールが動かなくなったのは何故でしょうか?

人間なら頭が体から離れては生きてはいけませんが、AIだとどうなるかの描写はなく、アーカイブやナビは人型の体を持っていないことから、あの世界のAIが必ずしも人型の体を持つわけではありません。

体から頭が離れると機能が停止するという設定があるなら、ルクレールの描写も自然なのですがそのような描写はないので不自然な場面になっています。

その他にもエリザベスは実験に失敗したため廃棄され、トァクに拾われた設定でしたが、AI人権法があるのに完成したAIが廃棄された理由についても触れられていません。

実験をしていたのは非合法な組織だったとか、AI人権法は名ばかりの法律でしかないといった描写はないまま話は進みます。

マツモトも2話であれだけビルのセキュリティに干渉していたのに、4話では戦闘プログラムと初期化プログラムを使ったくらいで、2話に比べて立ち回りはおとなしくなったことが引っ掛かりました。

またAIであるヴィヴィが自分が守ると決めた対象のためには、人間離れした身体能力で人間に攻撃していることから、AIの危険さを証明しトァクの活動に説得力を持たせてしまっています。

SFヒューマンドラマと紹介され、Huluでも『SF』『ヒューマンドラマ』『アニメ』とタグが付いている作品なのに、このような描写であるのが不思議でしたが、まんたんウェブのインタビューで脚本の梅原英司さんが下のコメントを出していました。

ジャンル分けしようとするとどうしてもSFアニメにカテゴライズされてしまうと思うのですが、むしろ“SF的”な面白さは極力排除しています。(中略)SFの面白さではなく、ドラマの面白さを描く作品にしたいと、常に意識していました。

このインタビューですが、記事のタイトルに『設定よりドラマの面白さを』とあります。

mantan-web.jp

SFな要素を重視せずに製作していたので、AIに関する描写が曖昧で人間との区別が雑で、劇中のAIが人間に見える行動をとるのもそのためだと思われます。

前回はこちら↓

www.mation-anime.com