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3分でわかる小説『謎が解けたら、ごきげんよう』

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※以前別サイトに書いた記事を移したものです。

前作『昭和少女探偵團』に続き、タイトルは変わりましたが続編であるこちらも取り上げます。前作と同じように茜や潮の言動は魅力的でしたが、それ以外については引っ掛かるところの多い小説でした。

短編集

『謎が解けたら、ごきげんよう』は全4話で構成されています。これは前作も同じでしたが、今作は各エピソードのつながりが薄く、同じキャラクターが登場する短編集のようでした。

1話では茜が潮の家に訪れ、2話はこの2人が通う女学校で上級生から相談を受けますが、3話は鬼頭刑事という前作に少しだけ登場したキャラクターが主役のエピソードです。

かと思えば4話は茜視点で始まり、茜が攫われるも潮の血縁者が現れて一暴れ。エピローグでは茜が満洲国のニュースを聞き、これからのことを考え込むという終わり方なので前作よりもちぐはぐさを感じる内容でした。

1話は茜が潮の家に忘れ物を届けようと訪れると、そこは茜の住む家とはかけ離れた環境で、茜は断りもせずに家に来たことで潮を傷つけたのではないかと後悔するところから始まります。

長屋の一部屋に母親と一緒に暮らしている潮は、自分が文房具すらまともに買えなくらい貧しいと茜に思われていると誤解し、2人の仲は少しだけぎくしゃくしました。

2話は女学校が舞台で、悩みを抱える上級生が茜に相談に持ちかける始まりです。茜たちが少女探偵団として依頼を受ける最後の話であり、1話と同様に格差に少しだけ触れます。

ただ茜は物売りの子が気にはなっても、だからといって何かをするようなキャラクターではありません。

2話は1話と違った形で貧しい暮らしをする人々が描かれますが、裕福な家に生まれ家柄によるしがらみもなく、今でいうボランティア活動に熱心なわけでもない茜なので、格差や貧しい人々の描写は意味のない伏線になってしまっています。

他にも2話の最後に茜の同級生であり友人の加寿子が『結婚したくないから先生になりたい』と茜に話しました。

加寿子は過去に男性絡みで何かあったような振る舞いをしますが、それらが何なのか明らかになることはなく加寿子はこれ以降登場しません。

茜は物売りの子も加寿子の思わせぶりな発言も深追いしないので、伏線でもなんでもない思わせぶりな要素にしかなりませんでした。

3話はそれまでとはまったく違う、鬼頭刑事が主役のエピソードです。

鬼頭刑事は前作の2話で初登場したキャラクターで、茜とも若干接点はありましたが脇役といっていいキャラクターで、鬼頭刑事の父の死から自身の秘密が判明するエピソードなのですが、それまでとはまるで違う陰鬱とした内容でした。

4話はそんな3話から茜視点に移り、お祭りの見世物小屋で女優として働くことになった母親が、何をしているのか気になった潮が自分だとばれないよう茜に化粧で変装を頼むところから始まります。

茜は紫に連絡したうえで自分や環も含んだ全員で変装して見世物小屋に行くことを決め、変装や見世物小屋に行くことを楽しんでいましたが、事件に巻き込まれて攫われ警察を巻き込んだ大騒ぎになります。

茜の身に危険が迫るエピソードでしたが全体的には明るく、茜たちが変装やお祭りや見世物小屋を楽しんでいる様子が描かれ綺麗に終わるのですが、だからこそエピローグとのギャップに違和感がありました。

探偵団とはいうけれど

前作の最後に探偵団入りした紫ですが、1人だけ違う学校なのもあり出番がありません。

4話では特に見せ場はなく本編には影響しない思わせぶりなことを言い、梅酒を飲んで酔っ払いながら見世物小屋を訪れ、ある事件で中止になったショーの再開に茜たちと一緒に協力しますが、それは事件が解決した後です。

本作では4話でしか現れず久しぶりに登場した際も、「名誉職を賜った」と皮肉を言いますが皮肉でも何でもないただの事実になっていました。

環も紫ほどではありませんが出番が減り、自作の発明品を披露することもなくなりピッキングくらいしか活躍する場面がありせん。

また探偵団自体が女学校くらいしか活躍できる場所がないため、相談事も恋の悩みのように限られ活躍するチャンスは減っています。

茜が潮との繋がりを作るために思い付きで始まった探偵団なので、2人の距離が縮まることで探偵団の存在自体が重要ではなくなりました。

前作では探偵団としての集合場所をあらかじめ決めていて、そこに集合するといった場面もありましたが、本作ではそういったものはありません。

エピローグの茜は探偵団の存在に触れず、誰が話しているのか分からない台詞や、いきなり別のキャラクターの視点に変わるところは前作と変わらないので、読後感はスッキリとしたものはなくモヤモヤが残ります。

 前作ついてはこちらで書いています。